起業家インタビュー
第12回
かしわや珈琲
店主 長澤 智之(ながさわ ともゆき)氏
ブレない信念で「幸せの一杯」を
プロフィール
●八王子市出身
●趣味はビリヤード、山登り、食べ歩き
●中学~高校時代はサッカー部に所属。大学時代での喫茶店アルバイトを機に「珈琲のある空間」に憧れを抱く。
●大学卒業後は大手印刷会社に入社。営業やプロモーションを担当。
●その後、砂糖卸売会社に転職。珈琲知識や人脈を形成。
●退職を機に「かしわや珈琲」創業。現在に至る。
●コーヒーマイスター、コーヒーインストラクター2級
会社情報
住所:東京都八王子市千人町3-3-3
電話:042-663-6552
https://www.kashiwaya-coffee.com/

 

社名 かしわや珈琲
業種 珈琲豆の製造・卸・販売
創立 平成28年9月

 

Q はじめに今の営業内容を教えてください。

A 店内で焙煎した珈琲豆の店頭販売と、カフェやレストランへ卸販売をしている珈琲店です。

原料の生豆は、最上級グレードとされる「スペシャルティ―コーヒー」の中でも生産者(生産グループ、ステーション)のはっきりとしたハイグレードのみを使用しております。鮮度の良い状態で飲んでいただけるように心がけていますので、店内焙煎は少量ずつ、豆の販売期間は独自の基準を設け、一般的な基準より短くしていることも特徴です。

店舗外観。西八王子駅徒歩2分です。

店舗外観。西八王子駅徒歩2分です。

商品数は、お客様が選びやすいように8~10種類程度に絞っています。珈琲は大きく分けると酸味のある順に「浅煎り」「中煎り」「深煎り」があり、当店では其々をバランスよく取り揃えています。

また、珈琲は多くの言葉で語るよりも実際に飲んでいただかないと何も始まりません。当店は珈琲好きの方はもちろん、これから珈琲を楽しみたいというお客様に来ていただきご満足いただきたいので、お客様それぞれのお好みの味や、お飲み頂くシーン、ライフスタイルなどをお伺いして、最適と思われる珈琲をおすすめしております。

 

 

Q 起業したきっかけを教えてください。

A 大学時代にした喫茶店のアルバイトがきっかけです。その頃から色々な珈琲店を巡るうちに「こんな美味しい珈琲があったのか!」と幸せな出会いが沢山ありました。同時に「自分もこの喜びを誰かに感じてもらいたい」と思ったのです。幸せは一人では得られません。誰かに喜ばれることで幸せになれると私は思っています。自分が淹れた珈琲を美味しいと言ってもらえると私も嬉しい。ですので、お客様が誰かに珈琲を淹れて“おいしい!”と言ってもらって喜んで頂きたいと思っています。これが珈琲店創業を目指した動機です。当時から今まで、その想いは変わることがありません。

大学卒業後は大手印刷会社に入社し、食品メーカーの包装材料の営業を中心に15年勤務しました。そこで得た食品包材やプロモーションに関する知識・ノウハウは今でも活きています。退職後は、珈琲店開業に向けた土台づくりのため砂糖卸売会社に7年間勤務。そこではより専門性の高い珈琲の知識や人脈を形成することができました。

そして卸売会社退職後、サイバーシルクロード八王子主催の飲食店向け創業スクールに参加するなどして自身の考えをしっかり固め、平成28年9月、珈琲専門店「かしわや珈琲」を開業しました。

 

Q 起業するときに注意した点は?

A まずは「きちんとした店でありたい」という点です。個人でやっている小さなお店だからと言って店のクオリティが低いことは避けたかったです。それは珈琲の質だけでなく、店の内装や什器、椅子、テーブル、音響など、お店に入店されてから出られるまで、五感で満足いただけるポイントを沢山持つことを心掛けました。そうでないと商品自体も安っぽく見えてしまうと自らの普段の体験で認識しているからです。

淹れ方も丁寧にレクチャー。初心者の方でも安心です。

淹れ方も丁寧にレクチャー。初心者の方でも安心です。

また、当店は珈琲豆を販売する店ですので、お買い上げいただいたお客様が、ご自宅で美味しく飲んでいただけないと意味がありません。そのため、美味しく淹れる淹れ方も目の前で実演してお教えいたします。

そして「お客様のニーズとプラスアルファの価値をお渡しする」お店作りを心がけています。例えば、初めてご来店されるお客様には「酸味が無い方が好み」という方が比較的多いです。しかし、そういった方に酸味のある当店の「浅煎り」を試飲していただくと「この酸味なら美味しい!」と驚かれることが結構あります。好みがあることで選ぶ珈琲の選択肢が狭くなってしまうのは勿体無いと考えています。珈琲にはさまざまな豆のさまざまな味があります。ですので、当店では様々な味わいに出会えるよう個性のある豆を厳選して揃えています。

また、これらのことをこだわり持ちつつも「決して気を抜かないこと。常に客観性を持つこと」を心がけています。自分が良いと思うことが必ずしもお客様にとって良いとは限りません。独りよがりのお店にならないよう注意しています。

 

Q それでは起業してからどんなことに苦労しましたか。

全来店客の情報を記録。日々の接客に役立てている

全来店客の情報を記録。日々の営業に役立てている

A 予想と現実は違うことを痛感しました。色々想定はしていましたが、来店者数など中々計画通りに行かないです。

ただ、そうなった時にどう考えるべきかが大変重要です。私は、価値を下げるようなことは絶対にしたくなかったので、安売りやセール・安易な広告宣伝はしないようにしています。粘り強く「珈琲好き・美味しい珈琲をこれから楽しみたい方」のお客様層にお届けするための価値創造を模索し続けています。

一番有効なのはやはり「口コミ」。高品質はもちろんですが、例えば「珈琲に詳しくて色んなことを話す面白い店主がいる」ということも興味を引いていただけるポイントになるかもしれません。創業以来、お客様皆様について会話の内容、購入品、来店頻度などをノートに記しています。次回ご来店いただいた際にさらに良いサービスが提供できるように、出来る限り記録しお客様を記憶しています。SNSやHPの充実も図りつつ、そうした地道な積み重ねがお客様との信頼関係に繋がると信じています。

 

Q “八王子”で起業して良かったと思える点はありますか

A 地元ということもあり、同級生など知っている人が沢山いることは安心感があります。また、八王子には特有の連帯感があります。皆さん情が厚く、人とのつながりができやすいです。「みんなで頑張ろう!」と町全体で支え合う姿勢が強い地域性が魅力であると商売していて強く実感します。商売人は地域を向いてすることが大切。これからも地域の方々と共存しながら事業を継続していきたいです。

 

 

Q これからの事業の展望についてお聞かせください。

A まずは、店頭での販売量をもっと増やしていきたいです。珈琲専門店で買ったことが無いような方々に来ていただいて、珈琲本来の美味しさを実感してもらって、もっと共感の輪が広がればいいなと思っています。

試飲も大歓迎。新たな珈琲の魅力に出会えます。

試飲も大歓迎。新たな珈琲の魅力に出会えます。

そして、カフェやレストランといった業務用の卸売販売も伸ばしていきたいです。もちろん飲食店は料理がメインではありますが、珈琲もワインと同じように、料理を引き立たせることのできる重要な素材であると考えています。まだワインほどはそういった認知は浸透していない印象ですが、飲食店の価値を上げられるよう貢献していきたいです。

あとは、少し先の話になりますが、ゆったり飲んでいただける空間を作っていきたいと思っています。場所はどうするか等のハードルは多々ありますが、店頭販売・業務用販売を強化して実行に移したいと思っています。

創業前に3年計画を立てました。3年間はあれも、これも、といろいろなことをせず地道なことを積み重ねて成果をしっかり上げたいと考えています。3年目に入った今が大切な時で、4年目に向けてよりお店が魅力的になるように努力していきます。

 

Q これから起業を考えている方たちにメッセージをお願いします。

A やりたいことに対してはどんなことがあっても貫き通す「ブレない信念」を持つことが大事です。もっと言うと信念が無いと商売は難しいです。お蔭様で現在まで当店は続けられていますが、計画ではもう少し結果が出る予定でした。一方で、うまくいかないケースも想定し準備していました。何年間かは全然うまくいかなくても頑張れるように心構えをしなくてはいけないと思います。そのためには、優先順位を持って、それに基づいた行動を継続することが必要だと思います。起業はゴールではなくスタートです。単にスタートラインに立っただけですので、いかに継続していくかが重要です。毎日自問自答し色んなケースを想定しながら続ける。その覚悟が重要だと思っています。

(H31.1.15取材)

 

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