起業家インタビュー
第11回
(株)VRC
代表取締役社長 謝 英弟 氏
「空間としての3次元」で便利な生活を届けたい
プロフィール
●中国出身
●趣味は音楽鑑賞(クラシック)・スポーツ鑑賞
●日本在住11年目。早稲田大学博士号取得後、教員助手を経て大手ファブレスメーカーに就職。
●退職を機会に、3次元の事業を行う㈱VRCを設立。現在に至る。
会社情報
所在地:東京都八王子市明神町2-26-9MZビル301C
電 話:042-649-1595

 

社名 (株)VRC
業種 情報通信機器及びインターネット関連事業
社員 15名
創立 平成28年5月

 

Q はじめに今の営業内容を教えてください。

A 3Dスキャナーの開発販売や、3D関連のアプリケーション、コンテンツの開発販売を行っています。「世界にないサービス、社会にいる1人ひとりに便利をもたらすものを提供したい」と思い事業展開をしています。
当社の主力製品は短時間で3Dモデリングができる高画質の3Dスキャナーです。モデリングされたデータは数分でデータ確認や編集が可能で、自身のデータがフィギュアやゲーム画面と現れたり、形を変えたりすることができます。また、服を着た状態でも正確にサイズ採寸並びにモデリングができますので、様々な分野に応用できます。例えば、アパレル店舗でこの3Dスキャナーを使用すれば、試着せずに、服のフィット具合までも正確に分かる画像を見ることができ、ストレスの少ない快適な買い物が可能となるでしょう。このように、3次元による編集が進歩すれば、様々な情報と組み合わせることが可能となります。より豊富なコンテンツを開発でき、人々の暮らしの充実に貢献できます。
近年のVR(仮想現実)やAR(拡張現実)が市場での認知度向上に伴い、3次元技術の注目度も高まってきました。お蔭様で、少しずつではありますが、お客様からのお問合わせも増えてきております。まだまだ消費者ニーズを掘り起こす必要はありますが、当社の技術がいずれ、ワールドリーディングとなる自信は大いに持っています。

 

Q 起業したきっかけを教えてください。

A これまで長いものづくり歴史の中では、録音や画像、動画技術が発明されてきました。技術は時代とともに、音(1次元)・画像(2次元)・動画(時間軸としての3次元)と進化を遂げているところ、私は「空間としての3次元」に着目し、必ずその時代が来ると信じてきました。「1人ひとりに便利な生活を届けたい」「エンドユーザーを対象とした事業を立ち上げたい」という思いが日々強まり独立を決心しVRCを設立しました。

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謝社長

 

Q 起業するときに注意した点は?

A 一人で抱え込まず、協力できる方がいると、視野が広く持てます。
VRCを設立したときは、社内外に信頼できるパートナーを持つこと、社内体制整備に注力しました。その甲斐あって今では多くの方のご協力のもと、運営出来ていると感じています。
製造業については特に、開発費節約がカギとなります。事業として認めてもらうまでは、自己資金で賄うこととなります。私の場合は幸いにも、金融機関からの援助もあり助かりましたが、事業計画・資金繰り計画は綿密に立てなければなりません。その為、自社の財務状況を見てくれる協力者も1人は必要だと思います。そして、開発費を無駄にしないためにもトレンド・ライバル・市場の動向は常に把握しておく必要があります。

 

Q それでは起業してからどんなことに苦労しましたか。

A 市場に認めてもらうまで暗中模索の時代が続きました。確かな技術力はあっても、エンドユーザーに認めてもらえるまでには時間を要します。「どこにアプローチするか?」「どのようなサービスが提供できるか?」という点においては今でも模索している段階です。
科学技術の進歩はハードウェアの進歩にも依存してしまうという点も悩ましいところです。新技術を応用したいが、それに対応できる容量をもったコンピュータがなければ、市場に進出することはできないといった事態が生じるのです。10年前ではハードウェアが成熟しておらず、自社技術は取り入れることが出来ませんでした。
昨年あたりから、関連分野の技術進歩があり、自社技術も応用できるようになりました。これまでは、自社からアプローチしてお客様と技術の使い道を相談させていただいておりましたが、市場トレンドも追い風となり、お客様から「こういうサービスはつくれる?」といった逆提案をいただけるようになりました。科学技術の条件・市場の条件・エンドユーザーのニーズ条件が絡み合うビジネスは、やりがいは大きいですが、苦労もその分大きいです。

 

Q “八王子”で起業して良かったと思える点はありますか

A 応援してくれる「人」が多くいることです。創業後は八王子先端技術センターの方や金融機関、サイバーシルクロード八王子の方などに色々アドバイス等いただき、大変支えになりました。これからも色々と頼りにしたいと思っています。

短時間でモデリング可能な3Dスキャナー内

短時間でモデリング可能な3Dスキャナー内

 

Q これからの事業の展望についてお聞かせください。

A 引き続き、技術開発によってマーケットにアクセスしていきたいです。今年中に大手企業と連携してソリューションを提供することで、ブレイクスルーを起こしたい。今年は期待できる年です。このモチベーションによって、より皆さんの暮らしが快適になるお手伝いをしていきたいと考えています。

 

Q これから起業を考えている方たちにメッセージをお願いします。

A 発展途上中なのでアドバイスできる立場ではありませんが…。強いてお伝えするなら、私が日頃大切にしている以下の言葉をお伝えしたいと思います。
・財務数字に対して興味を持つこと、そして、お金以外のもの(特に社会貢献・他人に利益をもたらすこと)に対してもっと興味を持つこと
・社会責任を持て。経営者とは自分、相手そして社会を良くするための道を模索し続けて実行の努力をするものである
・精神的な修行に行くこと。人は貪欲に溢れるようになる。進むべき道を見失わない様に進むことが大事
・過去のことを勉強し周りの出来事を知ること。未来を予測する能力を備えよ。その上に、今見えるトレンドに流されるより、自分が所望の未来を考え続け、その道を開いて未来を導くこと
・Think Big。物事を長く大きい視点でみること

また、将来の為に消費者を牽引する商品サービスを提供することが大事であると考えています。今現在、市場ニーズのある商品を提供していても、いつか衰退期が来ますし、消費者を牽引しているとは言えません。将来に目を向け、より良いことを自分から追求することで、新たなものが生み出せ消費者はついていく。結果として企業は継続していくことができると信じております。

(H30.1.29取材)

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